2019年米国アカデミー賞授賞式が開催されるまでに起こった騒動は目立ったものだけでもこれだけある。

2017年に前会長シェリル・ブーン・アイザックスから、ジョン・ベイリー現会長が引き継いだ前回の第90回アカデミー賞は前年比視聴率20%減、70年代以来最低視聴率を記録した。

しかし、さすがに引き継いだばかりでまともな成果を求めるのはアンフェアというもの。(アイザックスは引継ぎ1年目にして、ここ20年で最高の視聴率をたたき出したのはこの際置いておこう。)さあ、2019年こそ彼が本領発揮する年だ。周囲も本人もそれは自覚していたはず。

映画芸術アカデミー会長として彼が実質的に仕切る、初のアカデミー賞授賞式はどうなったかといえば、世帯視聴率は14.9%から16.5%に、視聴者数は2650万人から2960万人に1割ほど増えた(ニールセン調査)。それも司会者なしで。

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見事に業績を盛り返し、会長としての能力を皆が見直した! ……と伝えたいところだが、そうではなかった。なぜなら史上最低視聴率だった昨年に次ぎ、ワースト2位の記録を作ったに過ぎないから。それにいくつかのミスも目立った。

イベントのラスト、作品賞の受賞スピーチが終了した後、ぽっかり空白の時間ができてしまい、作品賞のプレゼンターであるジュリア・ロバーツがクロージングの挨拶をせざるをえなくなってしまったのだ。放送時間を短くするためすったもんだしたはずなのに。「これでおしまいです。受賞者の方おめでとう。ブラッドリー・クーパーのママ(居眠りしていた?)、そして子供たちおやすみなさい。見てくれてありがとう」。明らかに台本なしの奇妙なジュリアの挨拶で締めくくられた。

しかしそれ以上に騒ぎになっているのが、毎年恒例の追悼コーナーで、逝去した何人もの偉大な功労者が抜けていたこと。たとえば、スタンリー・ドーネン。不朽の名作『雨に歌えば』(’52)の監督で、1998年にアカデミーが名誉賞も授けている名監督。でも彼は2月21日に亡くなったばかりだったため、きっと映像の編集が間に合わなかったのだ。仕方ないとしよう。

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もっとも批判を浴びているのは、昨年世界中で追悼された“ソウルの女王”アレサ・フランクリンが無視されていたこと。圧倒的な存在感を見せた『ブルース・ブラザース』(’80)はじめ、映画界への貢献も大きかった彼女はこれに先立つ1月のSAGアワードでもしっかり追悼(写真)されていたが、アカデミー賞ではナシ。しかし、名女優ジュリー・アダムスも見過ごされたことを鑑み、これも百歩譲って、彼女たちは受賞してなかったからなのかもしれないと自分を納得させてみよう。

でも、『愛すれど心さびしく』(’67)で助演女優賞候補となったソンドラ・ロック(写真右・2018年11月3日逝去)も、『スター・ウォーズ』のプロデューサーで、2度もノミネートされているギャリー・カーツ(2018年9月23日)の名前も入っていなかったことは言い訳ができない。少なくとも彼らはアカデミー会員だったはずだから。